マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は2026年6月29日、2030年までのAI国家実現に向けた行動計画「Malaysia Digital 2030(MD2030)」を発表した。デジタル経済が国内総生産(GDP)に占める割合を30%に引き上げることなどを目標に掲げる。
計画は、2026年から2030年を対象とする第13次マレーシア計画の方針を具体化するものだ。AIやデジタル技術を行政と産業の両面で活用し、政府のデジタル省が関係機関と連携して進める。
MD2030が掲げる2030年までの9つの目標
MD2030は既存の政策と連携し、経済成長だけでなく、行政のデジタル化やAIの活用、国民の暮らしの向上も目指す。2030年までに達成を目指す主要な目標は、次の9項目だ。
| No. | 指標 | 目標 |
|---|---|---|
| 1 | デジタル経済のGDPへの寄与率 | 30% |
| 2 | IMD世界デジタル競争力ランキング | 25位以内 |
| 3 | 国連・電子政府開発指数 | 20位以内 |
| 4 | 世界銀行・GovTech成熟度指数 | グループAを維持 |
| 5 | EIU・デジタル包摂指数 | 20位以内 |
| 6 | マレーシア幸福指数(MyWI、マレーシア統計局) | 年率1.6%成長 2026~2030年 |
| 7 | スタンフォードAI指数 | 10位以内 |
| 8 | オクスフォード・インサイツ・政府AI準備指数 | 10位以内 |
| 9 | WIPO・グローバルイノベーション指数 | 20位以内 |
出典:JETRO「マレーシア、AI国家実現に向けた行動計画『MD2030』を発表」を基に整理。いずれも今後の達成目標であり、現時点の実績ではない。
行政サービスのオンライン化を進める
MD2030は「政府」「経済」「インフラ」「人材」など七つの分野で行動目標を定めた。行政では、政府サービスの95%をオンライン化し、連邦政府が保有するデータをすべてデジタル化することを目指す。
国際的な評価指標についても、国連の電子政府開発指数で上位20位に入る目標を掲げた。いずれも2030年までに達成を目指すものであり、現時点の実績を示す数字ではない。
図中の金額の円換算:5年間のコスト削減目標RM45億(約1,755億円)、デジタル投資認可額RM1,500億(約5.85兆円)、デジタル輸出RM180億(約7,020億円)(いずれも概算、換算レートは文末参照)。
AIを支える設備と人材を整備
AI分野では、国内の法規制に沿ってデータを管理する「国家AIソブリン・クラウド」や、五つのスーパーコンピューター・クラスターを開発する計画だ。AIの専門人材2,000人を誘致し、労働者70万人に新たな技能を学ぶ機会を設けることも目標に含まれる。
政府はAIの導入を支援する法律の整備も掲げている。技術の利用を広げると同時に、データ保護や安全性に関する制度を整える方針だ。
国内企業の育成と投資拡大を目指す
産業面では、国内のテクノロジー企業5,000社への資金支援や、企業価値10億ドル以上の未上場企業「ユニコーン」五社の創出を目指す。デジタル分野の投資認可額については、RM1,500億(約5.85兆円)を目標に掲げた。投資認可額は政府が認めた投資計画の額であり、そのまま実際の投資額を表すものではない。
マレーシア・デジタルエコノミー公社によると、2025年のデジタル分野の投資認可額はRM874億(約3.41兆円)だった。過去最高のRM1,636億(約6.38兆円)を記録した2024年は下回ったが、AI、ビッグデータ、データセンター、クラウドサービスが投資を支えたという。
MD2030には幅広い目標が並ぶ。今後は、設備の開発や人材育成、法整備が計画に沿って進むかが焦点となる。

