ZUS Coffeeの店内カウンターとラテアート入りコーヒーを大きく見せ、パサール・スニ店の外観を添えた「なぜ人気?」の記事サムネイル。

ZUS Coffeeはなぜ人気?マレーシアで広がる「毎日買えるコーヒー」の仕組み

マレーシアで人気を集めるコーヒーチェーン、ZUS Coffee。2019年に小さな店舗から始まった同社は、店舗数で国内最大のチェーンへと成長した。VnExpressによると、2024年には店舗数でスターバックスを上回っている。

ZUS CoffeeとStarbucksの国内店舗数(2021〜2025年)。
ZUS CoffeeとStarbucksの国内店舗数(2021〜2025年)。

その特徴は、日常的に利用しやすい価格帯と、アプリによる事前注文・店舗受け取りの組み合わせにある。一方、海外展開では本国の方法が通用せず、見直しを重ねてきた。国内での事業モデルと海外での試行錯誤は、マレーシアで販売や出店を考える日本企業にも参考になる。

日常の買いやすさを、価格と注文方法でつくる

ZUS Coffee公式アプリのスマホ画面。残高、ポイント、商品案内が表示されている。
ZUS Coffee公式アプリの画面。

VnExpressの2026年8月の報道では、ZUS Coffeeの世界の店舗数は1,000店を超え、その大部分がマレーシアにあるとされる。海外を含む数字ではあるが、国内での存在感の大きさがうかがえる。

公式サイトが掲げるのは、スペシャルティコーヒーを日常的に楽しめる存在にするという方針だ。VnExpressも、創業時に十分に満たされていなかった中価格帯を狙ったことと、アプリで注文して店舗で受け取れる仕組みを特徴として挙げている。

出勤前や仕事の合間に購入する場面では、味に加えて価格や受け取りの手軽さも選択に関わる。日本企業が現地で出店する際にも、品質や日本での知名度だけでなく、顧客が普段使うサービスとの比較が必要になる。誰に、どの場面で利用してもらうかによって、適した価格や販売方法は変わる。

クアラルンプールのパサール・スニ周辺にあるZUS Coffeeの実店舗。マレーシアを題材にした壁画と青い店名看板。
ZUS Coffee パサール・スニ店(クアラルンプール、2025年7月20日撮影)。写真:Surat Layang/Wikimedia Commons(CC0)。サムネイルは、ZUS Coffee公式サイト掲載の店内・コーヒー写真と本写真を基に編集。

本国の成功を、そのまま海外に持ち込まない

MARKETING-INTERACTIVEによると、グループCEOのVenon Tian氏は、フィリピン進出後の最初の2年間に苦戦したと語った。マレーシアでの方法を再現しようとしたが、市場の違いから学ぶことになったという。

これは経営者の振り返りであり、個々の施策が業績に与えた効果までは記事に示されていない。ただ、本国で成立した条件を進出先で確かめ直すという論点は、日本企業にも当てはまる。

商品の味、購入頻度、店舗の立地、注文方法などを分けて考えると、現地で検証すべき項目が見えてくる。販売が伸びない場合にも、商品自体に課題があるのか、届け方に課題があるのかを切り分けやすい。

販売データと店頭観察を組み合わせる

ZUS Coffee運営会社の売上高(2022・2023年6月期)。
ZUS Coffee運営会社の売上高(2022・2023年6月期)。

同じ報道では、ZUS Coffeeが販売データを使い、支持される原材料や風味を商品開発に生かしていることも紹介されている。Tian氏は、現地の店舗を歩き、消費者と話し、食文化を理解することも重視すると説明した。

販売記録で分かるのは、何が、いつ、どれだけ売れたかである。選ばれた理由や購入を見送った理由は、聞き取りや売り場の観察で補う必要がある。

日本企業が市場調査を依頼する際にも、人気商品の一覧だけでなく、自社の判断に必要な問いを渡したい。自分用と贈答用のどちらで買われるのか、説明のどこで迷うのか。聞き取りの評価と実際の購入結果を照合することで、次に変えるべき点を絞りやすくなる。

アプリを注文と再利用の接点にする

ZUS Coffeeの公式ページでは、アカウント登録によって会員クラブに参加する仕組みを案内している。Google Playの開発元による案内でも、インドネシア向けに事前注文や初回注文の特典を紹介しており、海外展開にもアプリを組み合わせている。

こうした仕組みは、注文から次回利用までを設計する手段になる。ただし、特典がどの程度継続利用につながったかは、参照資料からは分からない。

日本企業が考えたいのは、自社に必要な顧客との接点である。店頭、代理店、通販サイトでは、得られる販売情報や顧客への連絡方法が異なる。アプリ開発を先に決めるより、商品改善にどの情報が必要か、選んだ販路で入手できるかを確認することが出発点になる。

小さく試し、次の展開を判断する

Tian氏は、新商品を全店へ導入する前に、20〜30店舗で3〜4週間試し、結果を見て展開を判断する方法を説明している。これは2026年10月の報道で紹介された同社の運用例であり、すべての企業に適した規模や期間ではない。

試験の条件は、確かめたいことによって変わる。初回購入の反応と再購入の有無では、必要な観察期間が異なる。購入間隔の長い商品は、短期間の売れ行きだけでは継続需要を判断しにくい。

日本企業がテスト販売を行う際も、販売数量だけでなく、販促費、欠品、返品など、拡大判断に必要な項目を先に決めておきたい。立地、価格、販促内容も記録しておけば、好調な結果が別の店舗や地域でも再現できるかを検討しやすくなる。

出典・集計条件を見る(13件)

ZUS CoffeeとStarbucksのマレーシア国内店舗数(2021〜2025年)
海外店舗・出店計画を除いた確認値。ZUSは2021年約60店、2022年180店、2023年末360店、2024年9月550店、2025年9月800店。Starbucksは各年6月末で327・356・393・408・301店。集計時点が異なるため、同日時点の比較ではない。
出典:CEO取材によるUtusan Malaysia、BusinessToday、Berjaya Food年次報告書(2022・2023・2024・2025)。

ZUS Coffee公式アプリのスマホ画面
残高・ポイント・商品案内などをアプリ上に集約した画面。画像出典:ZUS Coffee「ZUS App」。画面・キャンペーン内容は掲載素材のもので、利用時期により異なる。

ZUS Coffee運営会社の売上高(2022・2023年6月期)
2022年6月期は8,692万リンギット(約33.9億円)、2023年6月期は2億412万リンギット(約79.6億円)。運営会社Zuspresso (M) Sdn Bhdの売上高を示し、純利益や全世界のブランド売上とは区別している。図は比較可能な値を確認できた2期を表示し、直近年度の売上高を示すものではない。
出典:Ekonomi Rakyat(2022年)、Oriental Kopi Group上場目論見書・業界調査(2023年、p.293)。

グラフの出典・集計条件

円は1RM=39円で参考換算(2026年11月3日の参考レートを丸めて使用)。

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