マレーシアでGSTは復活する?当面はSST継続、2つの税制の違いを比較

マレーシアのアミル・ハムザ第2財務相は2026年10月29日、生活費の負担を理由に、物品・サービス税(GST)の再導入を現時点では検討しない方針を示した。政府は売上税・サービス税(SST)を継続し、取引の過程で税負担が重なる問題の緩和と、納税手続きの簡素化を進めるとしている。

現地で商品を販売したり、事務所や設備を借りたりする日本企業にとっては、GSTへの移行よりも、現在のSSTの課税範囲や免税条件を確認することが当面の実務上の論点となる。

生活費への影響を重視し、SSTを維持

Malay Mailが掲載したベルナマ通信の報道によると、第2財務相は2027年度予算案の審議で、GSTには徴税の効率性や透明性などの利点があると認めた。一方、所得の多くを消費に回す低・中所得層には、所得に対する負担が重くなりやすいとの見方を示した。

政府は、課税する商品やサービスを選び、生活必需品を対象外にできるSSTの仕組みを重視している。今回の発言は税制運営の方針であり、新たな税率変更や免税措置の実施を発表したものではない。

GSTに代わり、2018年からSSTを運用

マレーシアでは2018年9月、GSTに代わってSSTが導入された。税関当局によると、売上税は国内で製造される課税対象の商品や輸入品に、サービス税は指定されたサービスに課される。

幅広い取引段階で課税し、仕入れ時に支払った税を差し引くGSTとは仕組みが異なる。SSTでは、商品・サービスの分類や免税の適用によって負担が変わるため、一律の税率を前提に販売価格や調達費を計算することはできない。

GSTとSSTの主な違い

GSTは物品・サービス税、SSTは売上税とサービス税の総称だ。両者では、課税される段階と仕入税額の扱いが大きく異なる。

比較項目 GST(旧制度) SST(現行制度)
課税の仕組み 製造・卸売・小売など、複数の取引段階で付加価値に課税する。 売上税とサービス税からなる単段階型。売上税は原則、製造または輸入の段階で課税する。
主な課税対象 免税・ゼロ税率の対象を除き、商品・サービスに幅広く課税する。 指定された商品・サービスが対象。品目・業種ごとに課税範囲や免税条件が異なる。
仕入税額控除 要件を満たす仕入れ時のGSTを、売上時に受け取るGSTから差し引ける。 GSTのような一般的な仕入税額控除はない。対象取引には原材料免税やB2B免税などの軽減措置がある。
税率の目安 旧制度の標準税率は6%。廃止前には0%へ引き下げられた。 売上税は主に5%・10%など。サービス税は原則8%で、飲食・通信・物流や賃貸・リースなど一部は6%。
制度の位置付け 2015年に導入され、2018年にSSTへ移行。今回の政府発言は、当面は再導入を検討しないという方針。 2018年9月1日に再導入された現行制度。課税範囲や免税措置は、その後も見直されている。
企業の確認点 売上税額・仕入税額の記録、控除要件、適切な請求書の管理。 自社の登録義務、商品・サービスの区分、適用税率・免税条件、契約価格への税の扱い。
GST欄は旧制度の一般的な説明。再導入後の制度・税率を示すものではない。SSTの税率・免税は、取引内容や適用日により異なる(2026年11月4日確認)。

出典:マレーシア財務省「GST・SST比較資料」、税関「Understanding SST」「FAQ Service Tax」および文末の財務省資料を基に作成。

企業が確認すべきは課税範囲と契約条件

SSTは制度を維持しながら内容を変更している。2025年7月には賃貸・リースや建設などへサービス税の対象が拡大した。その後、賃貸・リースのサービス税率は2026年1月から8%から6%へ引き下げられた。

日本企業は、自社の登録義務に加え、仕入れや賃料などの請求に適用される税率、免税条件、契約価格に税が含まれるかを確認する必要がある。今後は、政府が掲げる税負担の重複軽減や手続き簡素化が、どの取引を対象に、いつ具体化されるかが確認点となる。

出典を見る(8件)
Malay Mail/ベルナマ通信「Finance minister II: GST not an option amid high cost of living, govt sticking with SST」(2026年10月29日)
マレーシア税関「Guide on Sales Tax Registration」
マレーシア税関「Background — Sales Tax and Service Tax」
マレーシア財務省「Targeted Revision of Sales Tax Rate and Expansion of Service Tax Scope Effective 1 July 2025」
マレーシア財務省掲載・ベルナマ通信「賃貸サービス税を6%に引き下げ、中小企業向けの新たな免税措置」(2026年1月5日)

マレーシア財務省「Fiscal Outlook 2024:GST・SSTの制度比較」
マレーシア税関「Understanding SST」
マレーシア税関「FAQ Service Tax」
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