ShopeeとLazadaのロゴ、ECアプリを利用する実写真、義務化の方針の白文字。マレーシアの海外EC向け電子インボイスを紹介する記事サムネイル。

マレーシアの海外EC販売、手続きはどう変わる?電子インボイス義務化の方針

マレーシア政府は、海外を拠点とする電子商取引(EC)プラットフォームと、その上で販売する事業者に電子インボイスの使用を義務付ける方針を示した。アミルザン国内取引・生活費相が2026年10月28日の予算審議で説明した。

同相は、プラットフォームや販売事業者の国内での事務所開設にも言及した。ただし、今回確認した資料では、義務の開始日や対象となる販売事業者の範囲などは明らかになっていない。日本からマレーシア向けに越境ECを行う企業も、今後の正式な制度案を確認する必要がある。

海外プラットフォームの取引把握を強化へ

電子インボイスは、取引情報を所定の形式で作成し、税務当局のシステムで確認する仕組みである。マレーシア政府は段階的に導入を進めてきた。

2025年の内国歳入庁の説明では、海外ECプラットフォーム運営者は当時、マレーシアの電子インボイス制度の対象になっていなかった。一方、そのようなプラットフォームを通じて販売する事業者には、自ら電子インボイスを発行する必要がある場合があると説明していた。

従来のインボイスと電子インボイスは何が変わる?

インボイスは、商品やサービスの内容・金額を伝える請求書だ。電子インボイスになると、売り手が請求内容を国のシステム「MyInvois」に送り、自動チェックを受けてから買い手へ渡すという手順が加わる。

ここでいう「検証」は、必要な情報が入力されているか、データの形式が合っているかなどをシステムが確認すること。税務署の職員が取引を一件ずつ審査して承認する、という意味ではない。

何が変わる? 従来の請求書 電子インボイス(MyInvois)
請求書の作り方 紙やExcel、会計ソフトなどで作り、紙やPDFで渡す。 MyInvoisの画面に請求内容を入力するか、対応する会計ソフトからデータを送る。PDFをメールで送るだけでは完了しない。
買い手に渡すまで 売り手が請求書を作る → 買い手へ渡す。 売り手が請求データを送る → MyInvoisが自動チェック → チェックを通った請求書を買い手へ渡す。
国のシステムの関わり 請求書を渡す際に、MyInvoisでのチェックは受けない。 内国歳入庁(LHDN)のMyInvoisが、入力内容やデータ形式などをチェックする。職員による個別審査ではない。
買い手が伝える情報 会社名や宛名、住所など、請求書に必要な情報を伝える。 個別の電子インボイスを発行してもらう場合は、会社名などに加え、納税者番号(TIN)や会社の登録番号なども伝える。取引によって例外がある。
受け取った後 商品名・金額・宛名などに間違いがないか確認する。 同じように請求内容を確認する。請求書のQRコードから、MyInvoisに登録された請求書か、取り消されていないかなども確認できる。
間違いがあったとき 売り手に連絡し、訂正した請求書などを出してもらう。 自動チェック後は、そのまま書き換えられない。原則、チェック完了から72時間以内なら、売り手が取り消して作り直せる。買い手は取消につながる拒否の申請ができる。それ以降は、減額・増額・返金を記録する別の書類で調整する。
会社が準備すること 作成・送付・保管の担当や方法を決める。 取引先の納税者番号などを集め、誰がMyInvoisへ送るか、エラーや間違いにどう対応するかを決める。取引の書類は引き続き保管する。

※一般的な取引の比較。対象外の事業者や準備期間中の特例、複数の取引をまとめて発行する場合、買い手側が発行する場合などは扱いが異なる。電子インボイスへの切り替え自体で、売上税やサービス税の税率が変わるわけではない。

今回の海外EC向け方針は?上表は、既存のマレーシア電子インボイス制度の基本的な流れだ。海外のEC運営会社や日本の出店者について、誰がデータを送り、いつから対応する必要があるかは、今後の正式発表を確認する必要がある。

低額輸入品には既存の売上税制度

海外からオンラインで販売され、マレーシアに届けられる低額商品には、既に売上税の制度がある。税関当局によると、一定の条件を満たす国内外の販売者は登録し、対象商品に10%の売上税を課す必要がある。

電子インボイスと売上税は異なる制度である。電子インボイスの新たな方針を確認する際も、売上税の登録や納税が不要になると考えず、それぞれの対象条件を分けて確認する必要がある。

現地事務所の要件は正式発表を確認

報道によると、政府は海外プラットフォームの監督を強めるため、国内での事務所開設も求める方針だ。海外事業者を対象とするEC関連法案については、2027年の最初の国会会期での提出を予定しているとの報道もある。

ただし、法案の内容がそのまま成立するとは限らない。日本企業が確認すべきなのは、プラットフォーム運営者と個々の出店者のどちらに何が求められるのか、現地法人や事務所にどのような条件が付くのか、施行までに準備期間が設けられるのかという点だ。

日本からマレーシアへEC販売する企業は、今何を準備すればいい?

まずは、自社の販売の流れと、今使っている請求書・売上データを整理しておきたい。今回の方針だけで、日本の販売会社すべてにMyInvoisへの直接送信や現地事務所の開設が直ちに必要になったと判断することはできない。一方、既に適用されている税務上の義務は、今回の詳細発表を待たずに確認する必要がある。

以下は、新たな法的義務の一覧ではなく、正式なルールが決まった際に対応しやすくするための実務上の準備例だ。

今やっておくこと 具体的には? 確認する相手
① 販売の流れを整理する 自社サイトかECモールか、個人向けか企業向けか、日本から直送するか現地倉庫を使うかを一覧にする。契約上の売り手、請求書を出す会社、代金を受け取る会社、輸入者も確認する。 営業・EC担当、物流会社
② ECモールの対応を確認する 「電子インボイスはモールが発行するのか、出店者が発行するのか」「出店者が登録・提出する情報は何か」「対応開始日はいつか」を問い合わせ、案内を保存する。モールの対応範囲が未定なら、次回の案内時期も確認する。 利用中のECモールの出店者窓口
③ 会社情報と注文データを整える 日本法人の正式名称・住所・登録番号などを整理する。注文番号、商品名、数量、金額、通貨、値引き、送料、返品・返金の記録を取り出せるか確認する。納税者番号などは適用ルールに応じて確認し、未確定の必須項目を決めつけない。 経理・EC担当
④ 請求書と会計ソフトを確認する 現在の請求書を1件取り出し、注文・入金・返金の記録と照合できるかを確認する。ソフト会社にはMyInvoisへの対応可否、追加費用、準備にかかる期間を聞いておく。 経理、会計ソフト会社
⑤ 既存の税務対応を点検する 低額輸入品の売上税(LVG)について、自社の商品・販売額が対象か、誰が登録・徴収・納付するかを確認する。現地法人や現地の輸入者がある場合は、既存の電子インボイス義務も別途確認する。 税関の案内、現地の会計・税務専門家
⑥ 社内の確認担当を決める 誰が公式発表やモールの通知を確認し、誰が請求書の訂正・返品時の対応をするかを決める。問い合わせ先や確認した日付も残しておく。 EC責任者・経理・システム担当

正式発表が出たら確認する4つのポイント

  • 対象:海外のEC運営会社、個々の出店者、自社サイトで直販する企業のどこまでが含まれるか。
  • 開始日:いつから対応が必要で、準備期間や例外があるか。
  • 発行する人と方法:自社がMyInvoisへ送るのか、モールや現地の買い手側が対応するのか。必要な登録・入力項目は何か。
  • 現地拠点:事務所開設の要件がどの事業者に適用され、どのような拠点が求められるか。

最初の一歩:「販売経路・契約上の売り手・請求書の発行者・輸入者・税金の処理」を1枚にまとめ、ECモールや現地の会計・税務専門家に確認すると話を進めやすい。現地法人の設立やシステム改修の発注は、既存の義務と今後の追加要件を確認した上で判断したい。

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