読了目安 約17分この記事は時点の情報です。 2027年最低賃金令と適用除外条件は変わることがあります。
この記事の要点
2026年11月時点のマレーシアの法定最低賃金は、全国一律で月額RM1,700(約6.63万円)です。2027年6月にはRM2,000(約7.8万円)への引き上げ方針が示されていますが、現時点では未施行です。採用予算は基本給だけでなく、法定負担と採用市場の水準を分けて組みます。
- 週6日勤務の日給はRM65.38(約2,550円)、時給はRM8.72(約340円)です。
- 過少支払いには従業員1人につき最高RM10,000(約39万円)の罰金があります。
- 委託先には給与台帳、雇用契約、法定拠出の記録を確認します。
マレーシアで現地採用や委託先との提携を検討する日本企業の担当者に向けた記事です。最低賃金を月額RM1,700(約6.63万円)で見積もったものの、法定負担を含めると予算が足りない、あるいは必要な人材が集まらないと感じる場面もあるでしょう。
2026年の最低賃金は全国一律で月額RM1,700(約6.63万円)です。ただし、基本給で満たす必要があり、手当を合算することはできません。2027年のRM2,000(約7.8万円)方針も、正式な命令が出るまでは現行額とは区別して判断します。
この記事を読めば、適用対象と確認方法を押さえたうえで、法定負担を加えた採用予算を組み、委託先を含む賃金管理の確認項目を整理できます。
マレーシアの最低賃金とは、法令により民間部門の雇用主が労働者へ支払う基本給に設定される、全国共通の法定下限額である。
2026年の最低賃金は全国一律で月額RM1,700(約6.63万円)
2026年11月時点のマレーシアの法定最低賃金は、全国一律で月額RM1,700(約6.63万円)です。時給はRM8.72(約340円)で、勤務日数に応じた日額も定められています。
根拠は2024年最低賃金令(さいていちんぎんれい)です。英語名はMinimum Wages Order 2024、官報番号はP.U.(A)376です。
月額・日額・時給の法定額
- 月額:RM1,700(約6.63万円)。
- 時給:RM8.72(約340円)。
- 日額:週6日勤務はRM65.38(約2,550円)。
- 日額:週5日勤務はRM78.46(約3,060円)。
- 日額:週4日勤務はRM98.08(約3,825円)。
採用計画では、月給だけで予算を組まないでください。時給制、日給制、短時間勤務の雇用形態でも、契約条件に合う法定額を確認する必要があります。
月額RM1,700(約6.63万円)と時給RM8.72(約340円)は、別々の相場情報ではありません。2024年最低賃金令が定める同じ最低賃金水準を、賃金の支払単位ごとに示した法定額です。
日本円換算は為替レートと基準日を明記する
RM1,700(約6.63万円)が日本円でいくらになるかは、確認した日の為替レートで変わります。そのため、進出予算や社内稟議(りんぎ)では、固定の円額だけを書かず、換算日と採用レートを併記してください。
- 月額の円換算:RM1,700(約6.63万円)×確認日の「1RM(約39円)当たりの円レート」。
- 時給の円換算:RM8.72(約340円)×確認日の「1RM(約39円)当たりの円レート」。
- 週5日勤務の日額換算:RM78.46(約3,060円)×確認日の「1RM(約39円)当たりの円レート」。
たとえば、稟議資料には「2026年11月○日確認、1RM(約39円)=○円で換算」と記載します。この書き方なら、為替変動後に予算との差額を説明しやすくなります。
根拠となる2024年最低賃金令(さいていちんぎんれい)
2024年最低賃金令は、2011年国家賃金諮問委員会法(こっかちんぎんしもんいいんかいほう、Act 732)第23条にもとづく命令です。法定額の確認では、過去の記事や採用担当者からの伝聞ではなく、官報掲載の命令と施行状況を基準にしてください。
採用予算を作る最初の入力値は、2026年11月時点では月額RM1,700(約6.63万円)です。そのうえで、契約形態に応じて時給または日額へ置き換え、換算日の為替レートを添えて社内資料に反映します。
企業規模や勤務地を問わず適用される範囲
2026年11月時点の最低賃金RM1,700(約6.63万円)は、企業規模や勤務地を問わず、マレーシアの民間部門で広く適用されます。外国人スタッフも対象であり、小規模な現地法人や少人数の店舗も例外ではありません。
根拠となる2024年最低賃金令(さいていちんぎんれい、Minimum Wages Order 2024)では、月給制の基準を定めています。日給制や時給制の基準もあります。雇用形態だけで対象外と判断せず、雇用契約の内容に合わせて確認してください。
外国人労働者(がいこくじんろうどうしゃ)と短時間勤務者への適用
外国人労働者を含む民間部門の労働者には、原則として最低賃金が適用されます。日本企業の現地法人が雇う外国籍スタッフも、国籍を理由に低い基本給を設定することはできません。
パートやアルバイトなどの短時間勤務者も対象です。時給制で雇う場合は、時給RM8.72(約340円)を下回らない設計が必要になります。
家事使用人(かじしようにん)は適用対象外
家事使用人は最低賃金令の適用対象外です。住み込みメイドなど、家庭内の家事に従事する人が該当します。
ただし、会社の事務所や店舗で清掃や受付、調理補助などを担うスタッフは家事使用人とは別に判断します。家庭内の雇用か、事業のための雇用かを雇用契約書で明確にしておくと、認識違いの防止。
クアラルンプールと地方都市で金額は変わらない
クアラルンプール、ジョホール、ペナンなどで、法定の最低賃金額は変わりません。都市部と地方都市で異なるのは、あくまで人材を採用するために必要な市場給与です。
たとえば、同じRM1,700(約6.63万円)でも応募が集まるかどうかは、職種や勤務地で変わります。進出計画では法定最低額と採用予算を分けて考え、事業内容に合う人材の確保条件を整理してください。
従業員5人未満への猶予は2025年7月で終了
従業員5人未満の雇用主に認められていた猶予は、2025年7月31日で終了しました。2025年8月1日以降は、従業員数が5人未満でもRM1,700(約6.63万円)の基準を守る必要があります。
小規模な現地法人だからといって、旧来の猶予を前提に給与を決めると最低賃金違反になります。採用前に、基本給、勤務時間、雇用区分を一覧で確認してください。
現地パートナーに採用や人員配置を委ねる場合も、相手が誰をどの雇用条件で働かせるかは確認が必要です。進出する業界ごとの採用条件も踏まえたい場合は、マレーシア進出におすすめの業界7選!成長市場・ビジネスチャンスを徹底解説もあわせて確認してください。
RM1,700(約6.63万円)は基本給で満たす|手当との合算はできない
月額RM1,700(約6.63万円)は、基本給(きほんきゅう)だけで満たす必要があります。通勤手当(つうきんてあて)や住宅手当(じゅうたくてあて)、食事手当(しょくじてあて)を足してRM1,700(約6.63万円)にする設計は認められません。
固定残業代(こていざんぎょうだい)を含めても、基本給がRM1,700(約6.63万円)未満なら最低賃金の基準を満たしません。残業の対価として支払う金額は、基本給とは分けて管理してください。
基本給(きほんきゅう)と各種手当(かくしゅてあて)を分ける
最低賃金令(さいていちんぎんれい)が基準にするのはBasic wages、つまり基本給です。手当は採用条件として設けられますが、最低賃金を満たすための不足分には使えません。
| 給与項目 | RM1,700(約6.63万円)の判定 | 実務上の扱い |
|---|---|---|
| 基本給(きほんきゅう) | 含める | 単独でRM1,700(約6.63万円)以上に設定します。 |
| 通勤手当(つうきんてあて)・住宅手当(じゅうたくてあて)・食事手当(しょくじてあて) | 含めない | 基本給とは別の支給項目です。 |
| 固定残業代(こていざんぎょうだい) | 含めない | 残業対価として、基本給と分けて記載します。 |
たとえば、基本給RM1,500(約5.85万円)、通勤手当RM200(約7,800円)の月給設計は、支給総額がRM1,700(約6.63万円)でも不足です。求人票(きゅうじんひょう)で総額だけを大きく見せると、採用後の雇用契約書(こようけいやくしょ)とのずれも起きやすくなります。
歩合給(ぶあいきゅう)とインセンティブの扱い
歩合給(ぶあいきゅう)やインセンティブも、基本給の代わりにはなりません。売上や成果で毎月の支給額が変わるため、達成できなかった月に最低賃金を割る設計になるからです。
営業職や販売職でも、基本給をRM1,700(約6.63万円)以上としたうえで、歩合給やインセンティブを上乗せする形にします。変動報酬を採用の魅力として示す場合も、最低保証となる基本給を明記するのが安全です。
雇用契約書(こようけいやくしょ)と給与明細(きゅうよめいさい)で確認する項目
給与設計では、求人票、オファーレター、雇用契約書を同じ構成にそろえます。給与台帳(きゅうよだいちょう)も同じ構成で作成。書類ごとに基本給と手当の区分が違うと、労働局(ろうどうきょく)から説明を求められた際に根拠を示しにくくなります。
「月給RM1,700(約6.63万円)」ではなく、基本給がRM1,700(約6.63万円)以上と読める表示に。
基本給、手当、固定残業代を別々に記載し、それぞれの金額と支給条件をそろえます。
実際の毎月の明細でも、基本給がRM1,700(約6.63万円)を下回っていないかの確認が必要です。
採用予算を組む際は、最低賃金だけでなく法定負担も必要です。マレーシア進出の採用と人件費はいくら?2026年最新給与相場も参照し、基本給と会社負担を分けて見積もってください。
| 項目 | 誤った設計 | 適正な設計 |
|---|---|---|
| 基準額 | 手当込みRM1,700(約6.63万円) | 基本給RM1,700(約6.63万円)以上 |
| 通勤手当 | 不足分の補填に使う | 基本給と別に支給 |
| 残業代 | 基本給と混在 | 基本給と明確に区分 |
| 書類管理 | 書類ごとに金額差 | 求人・契約・台帳を統一 |
2027年のRM2,000(約7.8万円)方針は未施行|正式命令を確認する
最低賃金(さいていちんぎん)は2027年6月から月額RM2,000(約7.8万円)へ上がる方針ですが、2026年11月時点で法的に適用される額は月額RM1,700(約6.63万円)です。採用条件や予算は現行額で組みつつ、RM2,000(約7.8万円)になった場合も試算しておく必要があります。
2027年度予算案(よさんあん)で示された引き上げ方針
2026年10月9日に発表された2027年度国家予算案では、最低賃金をRM1,700(約6.63万円)から月額RM2,000(約7.8万円)へ引き上げる方針が示されました。上昇幅はRM300(約1.17万円)で、現行額から約17.6%の増額です。
ただし、予算案での発表だけでは雇用主に支払い義務は生じません。最低賃金は、2011年国家賃金諮問委員会法に基づく最低賃金令(Minimum Wages Order、さいていちんぎんれい)で定められます。
2027年6月の施行予定と現行額の区別
方針どおりなら、RM2,000(約7.8万円)は2027年6月から施行(しこう)される予定です。もっとも、正式な命令の公示(こうじ)前に、求人票や雇用契約の最低ラインをRM2,000(約7.8万円)と決める必要はありません。
| 確認時点 | 最低賃金の扱い |
|---|---|
| 2026年11月時点 | 法的な最低額は月額RM1,700(約6.63万円) |
| 2027年6月以降の方針 | 月額RM2,000(約7.8万円)への引き上げ予定。ただし正式命令の確認が必要 |
進出計画では、基本給をRM1,700(約6.63万円)とした現行案に加え、RM2,000(約7.8万円)へ上がった場合の案も並べてください。たとえば採用人数が10人なら、基本給だけで月額RM3,000(約11.7万円)の差が出ます。
中小零細企業(MSME、エムエスエムイー)除外案の注意点
次期引き上げでは、年間売上高RM5,000万(約19.5億円)未満の中小零細企業を対象外とする案も示されています。しかし、対象になる企業の条件や判定方法は、2026年11月時点で確定していません。
自社が中小零細企業に当てはまる見込みでも、正式な最低賃金令(さいていちんぎんれい)が出るまでは、RM2,000(約7.8万円)の対象外と決めつけないでください。現地法人だけでなく、委託先の人件費見積もりにも影響します。
準技能者(じゅんぎのうしゃ)・大卒者向けRM2,500(約9.75万円)構想
2027年度予算案には、準技能者や大卒者を対象にRM2,500(約9.75万円)の賃金基準(ちんぎんきじゅん)を設ける構想も含まれています。これは現行の最低賃金ではなく、対象職種や適用条件も正式には定まっていません。
日本企業が採用計画を作る際は、RM2,500(約9.75万円)を全職種の法定最低額として扱うのは早計です。一方で、語学力や専門性を求める職種では、将来の制度変更も見込み、人件費の感度分析(かんどぶんせき)に入れておくと社内稟議(りんぎ)の根拠を示しやすくなります。
| 項目 | 現行の法定額 | 2027年の方針 |
|---|---|---|
| 最低賃金 | RM1,700(約6.63万円) | RM2,000(約7.8万円)案 |
| 適用時点 | 2026年11月時点で適用 | 2027年6月開始案 |
| 法的状態 | 最低賃金令で施行済み | 正式命令前で未確定 |
| 予算対応 | 現行額で法令順守 | 改定時の感度分析 |
採用予算は基本給に法定負担を加えて作る
採用1人あたりの月額コストは、基本給(きほんきゅう)だけでは決まりません。雇用主(こようぬし)が負担する拠出金(きょしゅつきん)と、採用・研修にかかる費用まで分けて積み上げます。
会社負担は「給与の一律何割」とは決められません。EPF(従業員積立基金、じゅうぎょういんつみたてききん)、SOCSO(社会保障機構、しゃかいほしょうきこう)、EIS(雇用保険制度、こようほけんせいど)、HRD Corp(人材開発基金、じんざいかいはつききん)は対象や料率(りょうりつ)が変わります。従業員の属性、賃金(ちんぎん)、事業所の条件によるためです。
EPF(従業員積立基金、じゅうぎょういんつみたてききん) / SOCSO(社会保障機構、しゃかいほしょうきこう)とEIS(雇用保険制度、こようほけんせいど) / HRD Corp(人材開発基金、じんざいかいはつききん)の対象確認 / 採用1人あたりの月額コストを積み上げる表
予算を作る担当者は、最低賃金のRM1,700(約6.63万円)をそのまま月額人件費としてはいけません。RM1,700(約6.63万円)は基本給の法定下限であり、会社が実際に支払う総額ではないからです。
まず、候補者ごとに雇用形態、月額賃金、対象制度を整理します。そのうえで各制度の公式料率表を確認し、雇用主負担額を個別に計算してください。
- EPF:退職後の生活資金に備える従業員積立基金です。
- SOCSO:業務上の災害などに備える社会保障制度です。
- EIS:失業時の給付や再就職支援に関わる雇用保険制度。
- HRD Corp:人材育成に関する拠出の対象となるか確認する制度です。
「基本給の数%を法定負担として見込む」という作り方は、対象外の人を含めたり、必要な拠出を漏らしたりする原因になります。採用予定者の条件が決まってから、制度ごとに判定してください。
社内稟議(りんぎ)では、基本給と雇用主負担を別の行にします。分けておくと、採用人数が増えたときや賃金改定時にも、どの費目が増えたのか追えます。
| 費目 | 月額予算への入れ方 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 基本給(きほんきゅう) | 採用提示額を記入 | 最低賃金を満たす額か |
| EPF・SOCSO・EIS | 制度別に雇用主負担額を加算 | 従業員の属性、賃金、公式料率表 |
| HRD Corp | 対象なら拠出額を加算 | 事業所が対象となる条件 |
| 採用費 | 募集・選考費を採用人数で配分 | 採用手段、採用予定人数 |
| 研修費(けんしゅうひ) | 入社後に必要な教育費を加算 | 研修期間、担当業務 |
| 交代要員費(こうたいやくいんひ) | 必要な場合のみ別枠で計上 | 欠員対応や引き継ぎの必要性 |
たとえば基本給をRM1,700(約6.63万円)で計画する場合も、予算表では「RM1,700(約6.63万円)+制度別の雇用主負担+採用費・研修費・交代要員費」として扱います。最低賃金と総額人件費を同じ数字にしないことが、予算不足を防ぐ基本です。
現地パートナー候補に採用を依頼する際は、募集職種と予定基本給を最初に共有してください。雇用形態と必要な研修も伝えると、採用後の費用や人員計画まで見通しやすくなります。
法定負担の「何割」を先に決めるのではなく、採用予定者ごとに対象制度を判定し、公式料率表で計算します。予算書には、基本給・法定負担・採用費・研修費・交代要員費を分けて記載してください。

最低賃金だけでは採用しにくい職種がある
月額RM1,700(約6.63万円)は法令(ほうれい)を守るための下限であり、必要な人材を採用できる給与額ではありません。単純作業の求人でも、勤務地や勤務時間によっては応募が集まりにくくなります。
大卒者・多言語人材・専門職・管理職を採る場合は、最低賃金を起点に予算を組むと候補者不足になりやすいでしょう。求人を出す前に、職務(しょくむ)条件ごとの市場採用相場(しじょうさいようそうば)を確かめる必要があります。
法定下限額と市場採用相場を分ける
最低賃金は、雇用主が支払うべき基本給(きほんきゅう)の最低額です。候補者が応募するかどうかは、最低賃金だけでは決まりません。仕事内容と経験、言語、勤務場所・勤務時間を含めた募集条件で決まります。
たとえば、英語や中国語で顧客・取引先と対応する人材は、RM1,700(約6.63万円)の求人では条件が合いにくい傾向があります。専門知識が必要な人材や、部下を持つ管理職も同様です。日系企業が求める大卒者、多言語人材、管理職まで含めて採用するなら、月額RM3,000(約11.7万円)〜RM6,000(約23.4万円)以上の幅で検討が必要になる場合もあるでしょう。
RM1,700(約6.63万円)で求人を出して人が集まるかは、職種ごとに異なります。法令上は適法でも、必要な経験や言語力を求める求人では、応募数と候補者の質の両方が不足するおそれもあるでしょう。
大卒者・多言語人材・管理職の給与を見積もる
大卒者の初任給(しょにんきゅう)に全国共通の法定相場はありません。少なくとも基本給はRM1,700(約6.63万円)以上ですが、大卒だから一律にいくらと決められるものでもありません。
2027年度予算案では、技能職と大卒者に月額RM2,500(約9.75万円)の賃金基準を設ける構想が示されています。ただし、2026年11月時点では施行済みの最低賃金ではないため、採用相場や法定下限額として扱うべきではありません。
採用予算は、学歴だけで決めないことが大切です。営業なら必要な言語と担当顧客、経理なら会計業務の範囲、管理職なら管理人数と決裁権限を先に定めてから、給与帯を設計します。
製造現場とオフィス職で募集条件を変える
製造現場とオフィス職に、法令上の最低賃金差はありません。どちらも基本給RM1,700(約6.63万円)以上が必要であり、職種だけで決まる固定の給与差もありません。
| 募集区分 | 給与を左右する条件 | RM1,700(約6.63万円)での募集判断 |
|---|---|---|
| 製造現場 | 交代勤務、技能、安全管理、勤務地、通勤手段 | 未経験の定型業務でも、夜勤や通勤負担がある場合は応募条件を再確認します。 |
| オフィス職 | 英語・中国語、顧客対応、専門知識、業務責任 | 大卒者や多言語対応を求める場合、最低賃金だけでは候補者を絞り込めないことがあります。 |
製造業だから安く、オフィス職だから高いとは決められないものです。交代勤務がある製造現場は勤務条件が給与に反映されやすく、オフィス職は言語力や専門性が給与差につながりやすい、という違いがあります。
採用できる給与水準を求人公開前に確かめる
匿名化した相談内容を見ると、給与額だけを先に決め、後から職務内容を足す企業ほど候補者との認識がずれやすい傾向があります。「英語ができる営業担当」のような表現では、必要な水準も担当範囲も伝わりません。
求人公開前には、現地で確認する条件をそろえてください。
- 担当する職務(しょくむ)と、入社後に任せる範囲
- 必須の経験年数、資格、言語と使用場面
- 勤務時間、交代勤務の有無、勤務地と通勤条件
- 試用期間後を含む昇給方針(しょうきゅうほうしん)と評価基準
- その条件で候補者が集まる給与帯
紹介依頼では、希望給与だけでなく、上記の条件も伝えてください。条件を整理すると、候補者の選定精度が上がります。採用予定の職種ごとに、必須条件と譲れる条件を分けてから、給与水準を確認してください。
委託先・提携先は賃金管理まで確認して選ぶ
製造委託先や物流会社、販売パートナーは、見積価格だけで選ばないでください。基本給(きほんきゅう)が最低賃金(さいていちんぎん)を満たし、法定拠出(ほうていきょしゅつ)を継続して管理できる会社かを確認する必要があります。
2026年11月時点で、民間部門の最低賃金は月額RM1,700(約6.63万円)です。最低賃金の基準は基本給であり、手当(てあて)や歩合給(ぶあいきゅう)を足して満たす設計は認められません。
紹介依頼前にそろえる選定条件
紹介を依頼する前に、自社が求める人員体制と、相手に確認する賃金条件を選定票(せんていひょう)へ整理します。依頼内容が「安く対応できる会社」だけでは、稼働開始後に人員不足や値上げ交渉が起きやすくなります。
とくに確認したいのは、現場で働く人の雇用形態(こようけいたい)と人数です。正社員・契約社員・派遣人材・外国人労働者(がいこくじんろうどうしゃ)を分けて把握すると、委託先の供給力を判断しやすくなります。
- 依頼業務に必要な職種・人員数・稼働時間
- 雇用形態別の人員数と、欠員が出た際の補充方法
- 基本給の下限と、手当・残業代の扱い
- 最低賃金改定時に見積価格を見直す条件
給与台帳・雇用契約・法定拠出の確認
相手企業には、給与台帳(きゅうよだいちょう)、雇用契約書(こようけいやくしょ)、法定拠出の管理方法を確認します。個人情報を受け取る必要はありません。個人名を伏せた書式例や集計資料で、基本給の設定と支払いの流れを確かめれば足ります。
確認対象には、EPF(イーピーエフ・従業員積立基金)、SOCSO(ソクソ・社会保障機構)、EIS(イーアイエス・雇用保険制度)の納付管理を含めます。未納や管理漏れがある会社は、表面上の単価が低くても、長期の協業先としては慎重に判断すべきです。
賃金管理の確認は、法令順守だけでなく、必要な人員を約束どおり配置できるかを見極める確認です。
最低賃金改定が見積価格へ与える影響
最低賃金の改定は、委託費や物流費にも影響します。人件費の比率が高い業務では、基本給の上昇に加え、法定拠出や採用・定着の費用も見積価格へ反映されるためです。
2027年6月から月額RM2,000(約7.8万円)へ引き上げる方針が示されています。ただし、2026年11月時点の法的な最低賃金はRM1,700(約6.63万円)であり、次期の正式な最低賃金令(さいていちんぎんれい)と適用条件は確認が必要です。
契約や発注書には、賃金改定時の価格見直し条項(じょうこう)の有無を確認します。改定後に一方的な値上げや人員削減を求められないよう、対象職種、見直す費目、協議の時期を事前にそろえます。
協業開始後に確認する人員計画と離職状況
契約後も、月次または四半期ごとに人員計画(じんいんけいかく)と離職状況(りしょくじょうきょう)を確認してください。予定人数を確保できていても、離職が続く現場では品質、納期、安全管理に影響が出るおそれがあります。
確認時は、欠員数だけでなく採用予定人数・補充までの期間・担当者の交代状況を聞きます。最低賃金を満たしていても、必要な技能や言語力を持つ人材が定着する待遇とは限りません。
現地パートナーの紹介を依頼する際は、業務内容・人員数・希望する稼働開始時期に加え、基本給と法定拠出の確認可否を条件としてお伝えください。賃金管理まで確認できる候補に絞ることで、協業開始後の認識差を減らせます。
最低賃金で起きやすい失敗と違反時の対応
最低賃金(さいていちんぎん)の違反は、古い給与基準を使い続けることや、手当を基本給(きほんきゅう)に混ぜて判断することから起きます。違反した場合、2011年国家賃金諮問委員会法(こっかちんぎんしもんいいんかいほう、Act 732)第43条により、罰金(ばっきん)が科される可能性があります。従業員1人につき最高RM10,000(約39万円)です。
旧RM1,500(約5.85万円)を現行額として使う / 手当込みの金額を基本給として扱う / 改定方針を施行済みと誤認する / 不足額が出た場合の是正と記録の見直し / Act 732第43条の罰則
2026年11月時点の法定最低額は、全国一律の月額RM1,700(約6.63万円)です。旧RM1,500(約5.85万円)のまま予算書や求人票(きゅうじんひょう)を作ると、採用時点から最低賃金割れになります。
また、RM1,700(約6.63万円)を満たす対象は基本給(きほんきゅう)です。通勤手当や食事手当、歩合給(ぶあいきゅう)、インセンティブを加えてRM1,700(約6.63万円)になっていても、基本給が不足していれば基準を満たしません。
- 旧RM1,500(約5.85万円)を給与計算や採用予算の基準に残している。
- 基本給RM1,500(約5.85万円)に手当RM200(約7,800円)を足す。最低賃金を満たすと判断する。
- 2027年6月予定のRM2,000(約7.8万円)方針を、すでに施行済みの制度として契約書へ記載する。
RM2,000(約7.8万円)への引き上げは2027年度予算案で示された方針です。2026年の雇用契約書(こようけいやくしょ)と給与設計は、施行済みのRM1,700(約6.63万円)を基準にします。次期の正式な最低賃金令(さいていちんぎんれい)を確認してから変更します。
不足額が見つかったら、対象者・対象期間・基本給と手当の内訳を特定し、給与台帳(きゅうよだいちょう)と契約書をそろえて是正(ぜせい)します。不足の原因が給与計算なのか、契約条件なのかで対応が変わるため、現地の労務(ろうむ)専門家にも確認してください。
人件費が上がる局面では、最低賃金だけを採用予算の上限にしないことが大切です。採用人数、必要な技能、雇用開始時期を先に決めます。基本給と法定負担を分けて予算化すると、必要人材が集まらない事態と予算不足を同時に減らせます。
再発防止では、給与台帳、雇用契約書、求人票を同じ基準で点検します。紹介を依頼する際は、予定する職種と採用人数を整理します。基本給、手当の内訳、雇用開始予定月も整理しておくと、現地パートナー候補との条件確認が進めやすくなります。
まとめ
現行額・採用相場・総額人件費を分けて判断する
マレーシアで雇用する場合、2026年11月時点では基本給を月額RM1,700(約6.63万円)以上に設計し、採用相場と法定負担を加えた総額人件費は別に見積もります。
- 現行の最低賃金は、全国一律で月額RM1,700(約6.63万円)、時給RM8.72(約340円)です。
- 企業規模や勤務地による現行の猶予・地域差はなく、手当や歩合給を基本給に合算できません。
- 採用予算は、必要な職種や言語、経験、勤務地に応じた市場採用相場を確認します。法定負担は別に確認します。
- 2027年の月額RM2,000(約7.8万円)への引き上げ方針は、正式な最低賃金令が出るまで現行額と混同しません。
- 現地の委託先や提携先を選ぶ際は、採用条件に加え、相手先の賃金管理状況も確認します。
RM1,700(約6.63万円)は法令を守るための下限です。求人で人材を確保できる金額かどうかは、法定下限とは別に判断してください。
まず、自社が採用したい職種や必要な言語、経験年数、勤務地を整理してください。基本給・法定負担・採用相場を分けた条件で相談してください。
よくある質問
- Q.マレーシアの最低賃金の推移はどこで確認できますか?
- A.最低賃金の推移は、各年の最低賃金令と官報で確認します。古い記事の金額を予算根拠に使わず、適用開始日、対象となる雇用主、猶予措置の有無まで確認してください。
- Q.マレーシアの残業代は最低賃金の時給RM8.72(約340円)で計算しますか?
- A.残業代は最低賃金の時給だけで一律に決めません。雇用契約上の賃金、勤務時間、適用される労働法規を確認して計算します。最低賃金を満たしていても、残業代の計算が適切とは限りません。
- Q.雇用パス(Employment Pass、雇用許可証)の最低月給と最低賃金は同じですか?
- A.同じではありません。最低賃金は現地で雇用する労働者の賃金下限です。雇用パスの給与要件は在留・就労許可に関する別の基準なので、申請時点の公式要件を個別に確認します。






