読了目安 約9分この記事は時点の情報です。 就労ビザの最低給与基準や電子インボイスの適用基準などの法制度と税制は変わることがあります。
この記事の要点
マレーシアでの起業は、非公開有限会社(Sdn Bhd)の設立から始まります。ただし会社設立と就労ビザ(EP)の取得、営業ライセンスは制度がそれぞれ異なるため、事前の資金計画と正しい手続きの順番が不可欠です。
- Sdn Bhdの設立自体は資本金1リンギット(約39円)から可能ですが、実際の就労ビザ取得には事実上50万リンギット(約1,950万円)以上の資本金が必要です。
- 2026年6月施行のガイドライン改定により、就労ビザ(EP)のカテゴリー1および2の最低給与基準が引き上げられています。
- 年間売上高100万リンギット(約3,900万円)超の企業を対象とした電子インボイス(E-Invoice)の発行義務化が順次実施されています。
マレーシアで会社を設立して事業を始めたいと考えている経営者の方へ。会社さえ作れば簡単に就労ビザが取得できると考えて準備を進めると、厳しい最低資本金の要件や許認可の壁に阻まれ、事業開始前に資金が底をつくリスクがあります。
この記事では、現地法人であるSdn Bhd(私有限責任会社)の仕組みや初期費用の内訳、就労ビザ取得までの正確な手順を解説します。最後まで読めば、ビザやライセンス要件でつまずくことなく、マレーシア起業を合法かつ安全に進めるための具体的な判断が可能です。
マレーシア起業とは、外国人がマレーシア国内で非公開有限会社(Sdn Bhd)を設立し、就労ビザや各種許認可を取得して事業を展開することである。
マレーシア起業の基本と会社形態(Sdn Bhd)の仕組み
マレーシアでビジネスを始める場合、一般的な法人形態となるのは非公開有限会社(Sdn Bhd:Sendirian Berhad)です。外資100%での設立が可能であり、株主の責任が有限である点など日本株式会社に近い仕組みを持ちます。
Sdn Bhdは、マレーシア企業委員会(SSM)への登記を経て正式に設立されます。最低資本金は1リンギット(約39円)から設定できるものの、実際の事業運営やビザ取得においては別の要件が課されるため注意が必要です。
Sdn Bhdの特徴と設立に必要な人的要件
マレーシアでSdn Bhdを設立・維持するには、法律に基づき特定の役割を担う人物を配置しなければなりません。外国人が日本から法人を立ち上げる際にも、現地の法務基準を満たす体制づくりが必須となります。
具体的には、マレーシア国内に居住地を持つ取締役の選任や、国家資格を持つ会社秘書役(カンパニー・セクレタリー)の配置が法律で義務付けられています。知り合いが現地にいない場合でも、会社秘書役を務めるプロフェッショナル企業を通じて紹介してもらうのが一般的な進め方です。具体的には、現地の居住取締役やノミニー(名義)ディレクターの紹介を受けます。
Sdn Bhdの設立自体は法律上いつでも可能ですが、事業の許認可や就労ビザの取得要件は法人設立とは切り離して考える必要があります。
法人登記の仕組みを正しく理解し、自社の事業計画に合わせた体制を構築することが確実なマレーシア起業への第一歩となります。
マレーシア起業にかかる初期費用と資金計画の注意点
マレーシアで非公開有限会社(Sdn Bhd:Sendirian Berhad)を設立する場合、表面上の最低資本金は1リンギット(約39円)です。しかし、実際の移住や事業開始には数百万円単位のまとまった資金が必要になります。
会社設立の初期費用だけでなく、就労ビザの取得要件や許認可にかかる資金をあらかじめ正確に見積もっておかなければ、渡航後に資金が底をつくおそれがあります。
払込資本金の現実的な要件とビザの関係
マレーシアの会社法上は資本金1リンギット(約39円)から会社を設立できますが、これはあくまでペーパー上の規定です。
外国人が自身の事業のために就労ビザ(Employment Pass: EP)を取得する場合、移民局のガイドラインに基づく事実上の資本金要件があります。それは500,000リンギット(約1,950万円)以上の払込資本金です。
さらに、小売・卸売・飲食などの特定業種で営業許可証(WRTライセンス)を取得して事業を行う場合があります。このとき必要な最低資本金は1,000,000リンギット(約3,900万円)以上に設定されています。
「会社さえ作ればすぐにビザが下りて住める」という誤解を抱いたまま進めると、追加の増資やライセンス取得費用で計画が大きく狂うため注意してください。
資本金1リンギット(約39円)で会社を登記できた段階では、まだ就労ビザの要件を満たしていません。ビザ申請やライセンス取得に必要な資金計画を最初から組み込んでおく必要があります。
会社設立後に毎年必ずかかる維持費の内訳
会社を設立したあとは、事業活動の有無にかかわらず毎年必ず発生する固定の維持費があります。
法人の登記や管理には、法律で定められた会社秘書役(Company Secretary)の配置が義務付けられています。その報酬や税務申告を担う会計士への依頼費用が継続的にかかる仕組みです。
| 費用項目 | 目安・内容 |
|---|---|
| 会社秘書役(Secretarial Fee) | 年間数千リンギット(法的義務の遵守と書類管理) |
| 会計・税務申告費用 | 決算書作成および内国歳入庁(LHDN)への申告費用 |
| オフィス賃借料 | 実店舗やバーチャルオフィスなど事業実態を示す拠点維持費 |
また、年間売上高が100万リンギット(約3,900万円)を超える企業に対しては、内国歳入庁が定める電子インボイス(e-Invoice)のシステム対応や運用コストも発生します。
外資100%の法人の場合、中小企業向けの優遇法人税率が適用されません。初年度から一律24%の標準税率が課される点も踏まえ、余裕のある資金計画を立てることが確実な起業につながるでしょう。
詳しい法人の設立手順や具体的なスケジュールについては、マレーシア法人設立の手順と費用|資本金やビザの要件を解説で整理しています。
会社設立と就労ビザ(EP)・許認可の取得手順
マレーシアでの会社設立と就労ビザ(Employment Pass)の取得はそれぞれ異なる手続きであり、会社を作っただけでは自動的に長期滞在できません。現地で事業を営むには、企業委員会(SSM:Suruhanjaya Syarikat Malaysia)での法人登記から移民局でのビザ申請、さらに業種ごとの営業ライセンスの取得までを正しい順序で進める必要があります。
外国人がマレーシアで事業を始める場合、会社形態として非公開有限会社(Sdn Bhd:Sendirian Berhad)を選択するのが一般的です。法人の設立自体は最低資本金1リンギット(約39円)から可能ですが、ビザ取得や営業許可の実務においては、それぞれ求められる資金や人的要件が大きく異なります。
会社設立とビザ、営業ライセンスはそれぞれ独立した審査基準があるため、全体のステップを正しく把握して資金ショートを防ぐことが重要です。マレーシア進出の大まかな流れを整理するには、マレーシア進出で最初に整理したい5つのこともあわせて参考にしてください。
会社秘書役(Company Secretary)を選任し、企業委員会(SSM)へ申請して法人格を取得します。
小売や飲食などの業種では、外資規制に対応するWRTライセンスなどの営業許可を取得します。
給与基準や資本金の条件を満たしたうえで、移民局に対して就労パスを申請する手続きを進めます。
小売業や飲食業などの特定の事業を営む場合、外国資本が入る企業にはWRTライセンス(卸売・小売・飲食業等の外資規制ライセンス)の取得義務が生じます。このライセンスを取得する際には、実質的な要件として高額な資本金が必要となるケースが少なくありません。
また、自身が現地で働くための就労ビザ(Employment Pass)を取得するには、最新の給与基準をクリアする必要があります。カテゴリー1の場合は月額20,000リンギット(約78万円)以上、カテゴリー2の場合は月額10,000リンギット(約39万円)以上という基準が定められており、これに見合うだけの事業計画と資金力が求められる状況です。
「資本金1リンギット(約39円)で会社さえ作ればすぐにビザが下りる」という誤った認識のまま渡航すると、ビザの給与要件や許認可の資本金基準を満たせなくなる可能性があります。その結果として事業が停止するリスクが生じかねないため、法人の払込資本金やビザの要件は必ず事前に確認してください。

マレーシア起業で陥りがちな失敗と税務上の罠
マレーシアでの起業において最大の罠は、会社設立と就労ビザの取得が全く別の制度であることを見落とし、資金ショートを起こす点にあります。会社さえ作れば簡単に長期滞在できるという誤解から、ビザ要件や許認可の壁に直面して撤退する日本人が後を絶ちません。
会社設立とビザを混同して撤退に追い込まれる構造的リスク
マレーシアでは、非公開有限会社(Sdn Bhd:Sendirian Berhad)の設立自体は最低資本金1リンギット(約39円)から可能です。しかし、外国人が自身の事業のために就労ビザ(Employment Pass: EP)を取得する場合は、事実上の払込資本金として500,000リンギット(約1,950万円)以上が必要となります。
さらに、クアラルンプール市内などで小売業や飲食業を営む際には、外資規制ライセンス(WRTライセンス)の取得が義務付けられています。こちらの最低資本金基準は非常に高額になります。
会社登記(SSM:企業委員会)を済ませた後にこれらの高額な資金要件に気づき、事業を始められなくなる失敗が多発しているのです。
「会社を作ればすぐに住める」という古い情報を信じて渡航すると、ビザ申請の基準を満たせず不法滞在リスクを抱えることになります。会社秘書役(Company Secretary)や現地専門家を交えた事前の資金計画が欠かせません。信頼できるパートナーの探し方については、信頼できる現地パートナーの選び方を参考にしてください。
外資100%法人の法人税率と電子インボイス(E-Invoice)の義務
税務面においても、日本人が見落としがちな重要な罠が存在します。外国人株主が20%を超える法人の場合、マレーシアの中小企業向けに用意されている優遇法人税率の適用を受けることができません。
通常法人の標準法人税率は24%であり、外資100%の企業は初年度から一律でこの税率が適用されます。日本の親会社との課税関係も含め、税金が安くなると安易に期待していると、想定外の法人税負担に苦しむことになります。
| 項目 | 制度・要件の実際 |
|---|---|
| Sdn Bhdの最低設立資本金 | 法律上は1リンギット(ただしビザ取得時は実質500,000リンギット(約1,950万円)以上が必要) |
| 外資100%法人の法人税率 | 中小企業優遇の対象外となり、一律24%が適用される |
| 電子インボイス(E-Invoice) | 年間売上高100万リンギット(約3,900万円)超の企業を対象に順次義務化が進行中 |
法制度の変更や税務上の要件は厳格に管理されているため、最新の基準に合わせた事業計画が不可欠です。内国歳入庁(LHDN)が定める電子インボイス(E-Invoice)の導入義務など、近年の法改正にも確実に対応していく必要があります。
まとめ:確実なマレーシア起業のために進めるべきステップ
マレーシアで起業を成功させるには、会社設立(Sdn Bhd)と就労ビザ(Employment Pass)、そして事業ライセンスの取得を別々に捉えてください。正しい順番で資金計画を立てることが不可欠です。
マレーシア起業で失敗を避けるためには、会社設立の登記手続きだけでなく、ビザ要件や許認可に必要な実質的な資本金を含めた総額で見積もることが重要です。
事業を安全に進めるために、次の要点を押さえておきましょう。
- 会社形態は非公開有限会社であるSdn Bhdを選択し、現地の会社秘書役(Company Secretary)を選任して法的な要件を満たす。
- 就労ビザの取得には、カテゴリーごとの新しい給与基準や居住取締役の設置義務をあらかじめ確認する。
- 小売や飲食などの業種では、WRTライセンスなどの許認可取得に高額な資本金が必要になる点を考慮する。
- 外資100%の法人は中小企業向けの優遇税率の対象外となり、初年度から一律24%の標準法人税率が適用されることに注意しなければなりません。
まずは、マレーシアでの法人設立と許認可の基本を確認し、現在の事業計画に必要な初期費用とライセンス要件の洗い出しから始めてください。

よくある質問
- Q.自分でマレーシアに行ってすぐに銀行の法人口座は作れますか?
- A.法人の設立登記が完了したあとに銀行口座の開設手続きが可能ですが、マネーロンダリング対策の厳格化に伴い、面談や事業計画の審査に時間がかかるケースが一般的です。
- Q.会社を作る手続きは、日本にいながらすべて完了できますか?
- A.オンラインシステムを通じて日本から設立手続きを行うことは可能ですが、最終的な銀行口座の開設やビザ手続きの段階で現地渡航が必要になる場合があります。
- Q.マレーシア起業で英語力はどのくらい必要ですか?
- A.行政手続きや会社秘書役とのやり取り、法人の運営において英語でのコミュニケーションが必須となります。




