読了目安 約18分この記事は時点の情報です(雇用パスの基本給基準や審査システム変更のため)。
この記事の要点
マレーシアでの会社経営には、現地法人(Sdn Bhd)の雇用パス(EP)、ラブアン法人ビザ、PVIP等の選択肢があります。2026年の最新改定によりEP Category Iの最低基本月額給与はRM20,000(約78万円)となるなど要件厳格化が進むため、資本金や業種規制を把握した計画的な準備が不可欠です。
マレーシアでの会社設立や事業拡大に伴い、ご自身や役員の経営ビザ取得を進めている経営者の方へ。ビザの選択ミスや条件の認識不足によって、会社設立後に事業が停滞したりご家族の移住計画が狂ったりする事態は絶対に避けたいところです。
この記事では、現地法人(Sdn Bhd:エスディーエヌ・ビーエイチディー)での雇用パス(EP:エンプロイメント・パス)やラブアン法人、PVIP(プレミアム・マイ・セカンド・ホーム)など主要な経営ビザ4種類の条件を比較解説します。自社の事業形態に最適なビザを見極め、不許可リスクを避けて安全に現地経営と家族帯同を実現できるようになります。
マレーシア経営ビザとは、マレーシア国内で現地法人やラブアン法人を設立・経営する外国人が、現地に滞在して事業活動および役員就任を行うために取得する就労・長期滞在許可の総称である。
マレーシアで事業経営を行うための主要ビザ4種類
マレーシアで現地に滞在しながら会社を経営するための主要なビザは4種類あります。現地法人雇用パス(EP)、ラブアン法人就労許可、プレミアム・ビザ・プログラム(PVIP)、DE Rantauノマドビザです。
それぞれのビザによって、管轄する行政機関、必要とされる資本金や収入条件、現地で認められる事業活動の範囲が大きく異なります。富裕層向けのPVIPを含め、自社の事業形態や予算に合わせた制度選択が成功の鍵となります。
| ビザの種類 | 管轄機関 | 主な対象・事業形態 | 経営・就労の可否 |
|---|---|---|---|
| 現地法人雇用パス(EP) | 内務省入国管理局(ESD/MIDA) | 現地法人(Sdn. Bhd.=センドリアン・バーハッド)の役員・経営者 | 自社での経営・実務就労が可能 |
| ラブアン法人就労許可 | ラブアン金融サービス庁(Labuan FSA) | オフショア法人(Labuan IBC)の役員 | 国際取引・国際事業の経営が可能 |
| PVIP(プレミアム・ビザ) | 内務省入国管理局 | 高額所得者・投資家・起業家 | 複数事業への出資・経営参加が可能 |
| DE Rantauノマドビザ | デジタル・エコノミー公社(MDEC) | IT・デジタル分野の個人事業者・リモートワーカー | 国外取引中心の小規模活動(最長2年) |
現地法人(Sdn Bhd)雇用パス(EP):事業本格展開の標準ルート
マレーシア国内で店舗やオフィスを構え、現地での営業や採用を伴う本格的な事業を行う場合が該当します。現地法人(Sdn. Bhd.=センドリアン・バーハッド)を設立して雇用パス(EP=エンプロイメント・パス)を取得するのが最も一般的な手順です。
100%外国資本の法人で役員として雇用パスを申請する場合、最低払込資本金(さいていしほんきん)としてRM500,000(約1,950万円)(マレーシア・リンギット)以上が必要です。飲食や小売、生活関連サービス業(外資過半数)では、卸売・小売り・貿易ライセンス(WRT承認)の基準によりRM1,000,000(約3,900万円)以上の資本金が求められます。
2026年6月1日に施行された新基準により、経営幹部向けのカテゴリー1(Category I)の申請には月額RM20,000(約78万円)以上が必要です。また、カテゴリー2(Category II)では月額RM10,000(約39万円)〜RM19,999(約78万円)の基本給(役員報酬)設定が求められます。手当やインセンティブを含めない基本給のみで条件を満たす必要があります。
法人を設立しただけでは雇用パスは発給されません。会社設立後に外国人雇用申請システム(XPats Gatewayなど)での企業登録や資本金手続を完了させ、入国管理局の審査を個別に通過する必要があります。また、外国人は個人事業主として登記・申請することはできません。
ラブアン法人就労許可:オフショア事業・国際取引向けルート
連邦直轄領ラブアンにオフショア法人(Labuan IBC)を設立する選択肢もあります。ラブアン金融サービス庁(Labuan FSA)から就労許可(Labuan Work Permit)を取得する形です。
国際貿易、コンサルティング、持株会社(ホールディングス)など、マレーシア国外の取引を中心とする事業に適した枠組みです。実体要件(現地雇用や運営費用の発生)を満たすことで、法人税率3%という優遇税制が適用されます。
マレーシア本土の雇用パスとは管轄機関が異なるため、審査手続や提出書類の運用基準も独立しています。現地法人の資本金ハードルが高い国際ビジネス事業者にとって有力な選択肢です。
プレミアム・ビザ・プログラム(PVIP):長期滞在・複数事業経営ルート
富裕層や投資家向けの長期滞在制度であるPVIP(プレミアム・ビザ・プログラム)を利用して、マレーシアで会社経営を行うことも可能です。
PVIPは投資家パス(Investor Pass)に近い性質を持ち、一定の財務要件(海外収入や現地定期預金等)を満たすことで最長20年間の滞在許可が得られます。従来の移住用ビザと大きく異なる点は、マレーシア国内での出資、会社設立、現地法人の取締役への就任が公式に認められている点です。
単一の企業に雇用が縛られる雇用パスと異なり、複数の事業に出資して経営に関与することができます。資金力があり、複数の事業展開や柔軟な滞在スタイルを希望する経営者に選ばれています。
DE Rantauノマドビザ:小規模デジタル事業者向け短期滞在ルート
マレーシア・デジタル・エコノミー公社(MDEC)が運営するDE Rantauノマドビザは、IT・Web関連のフリーランスや小規模な事業者向けの選択肢です。
年間24,000米ドル相当以上の収入証明があれば、マレーシア現地に法人を設立することなく最大2年間滞在しながらリモートでビジネスを行えます。ただし、このビザはあくまでデジタルノマド向けであるため、マレーシア国内の企業や消費者を直接のターゲットとする営業・取引を行うことはできません。
最初はノマドビザで滞在しながら現地の市場調査を行い、将来的に現地法人を立ち上げて雇用パスへ切り替えるといった段階的な進出アプローチで活用されています。

現地法人(Sdn Bhd)雇用パス(EP)の資本金・役員報酬条件
マレーシアの現地法人(Sdn Bhd:センドリアン・バーハッド)で経営者が就労ビザである雇用パス(EP:エンプロイメント・パス)を取得するには、出資比率に応じた払込資本金を満たさなければなりません。あわせて、2026年6月施行の新基準に沿った役員報酬を設定する必要があります。外国人による個人事業主での起業は認められておらず、会社を設立しただけで自動的にビザが発給されることもありません。
外資比率で異なる最低払込資本金(RM250,000(約975万円)〜RM500,000(約1,950万円))
自分が立ち上げた会社の社長として雇用パス(EP)を申請する場合、企業の出資構成ごとに定められた最低払込資本金を準備する必要があります。外資が100%出資する現地法人の場合、最低基本払込資本金は50万リンギット(RM500,000(約1,950万円))です。
| 資本構成・業種 | 最低払込資本金要件 |
|---|---|
| 100%マレーシアローカル資本企業 | RM250,000(約975万円)以上 |
| 外資との合弁企業(外資30%以上) | RM350,000(約1,365万円)以上 |
| 100%外国資本企業 | RM500,000(約1,950万円)以上 |
| 飲食・小売・卸売・生活関連サービス(外資過半数) | RM1,000,000(約3,900万円)以上(WRT承認要件) |
飲食業や小売業、貿易業などを外資過半数で運営する場合は、WRT(ダブリューアールティー:卸売・小売り・生活関連サービス)ライセンスの要件が適用されます。そのため、資本金は100万リンギット(RM1,000,000(約3,900万円))以上が必要となります。詳しい資金計画の立て方は「マレーシア起業費用まとめ|資本金の現実と年間維持費を完全解説」で解説しています。
2026年6月改定の役員報酬・基本給要件(Category I:月額RM20,000(約78万円)以上)
経営者が最高経営責任者(CEO)や取締役として雇用パス(EP)を取得するには要件があります。2026年6月1日に改定された新給与基準に従って毎月の役員報酬(給与)を設定しなければなりません。経営幹部向けの「Category I(カテゴリー1)」で申請する場合、設定すべき最低給与は月額20,000リンギット(RM20,000(約78万円))以上です。
| ビザカテゴリー | 月額基本給要件(2026年6月以降) | 主な対象役職 |
|---|---|---|
| Category I | 月額RM20,000(約78万円)以上 | 最高経営責任者・代表取締役・役員 |
| Category II | 月額RM10,000(約39万円)〜RM19,999(約78万円) | 取締役・マネージャー・上級管理職 |
| Category III | 月額RM5,000(約19.5万円)〜RM9,999(約39万円) | 専門職・技術者(経営者申請は非推奨) |
給与基準の審査対象は「手当を含まない基本給(Basic Salary)」のみです。住宅手当や役職手当、インセンティブを合算してRM20,000(約78万円)を超えていても、基本給自体が満たない場合は審査で却下されます。
同一雇用主における最長通算滞在期間(Category I/IIは最長10年)
2026年6月1日の制度改定により、同一企業で雇用パス(EP)を保持できる最長通算期間が新設されました。Category IおよびCategory IIの保持者は、同じ会社で通算10年を超えてビザを更新し続けることができません。
以前のように無期限で更新を繰り返す選択肢はなくなりました。そのため、現地で長期事業を行う場合は、10年以内に他形態の居住ビザ(高度人材向けのレジデンスパス・タレントなど)へ切り替えるか、現地人材への経営承継を進める計画をあらかじめ組み込む必要があります。なお、新規および更新申請の手数料は1件につきRM2,000(約7.8万円)であり、許可書は電子形式の「ePASS(イーパス)」としてオンラインで発行されます。
ラブアン法人を活用したビザ取得とマレーシア本土法人の違い
ラブアン法人でのビザ取得は、管轄行政機関(かんかつぎょうせいきかん)がマレーシア本土(ほんど)法人と異なり、資本金審査の基準や適用される法人税率(ほうじんぜいりつ)で大きな違いがあります。マレーシア国外向けのIT事業やコンサルティング業であれば、高い払込資本金(はらいこみしほんきん)を準備せずに経営ビザを取得できる選択肢となります。
ラブアン金融サービス庁(Labuan FSA)管轄の就労許可システム
マレーシア本土法人(Sdn Bhd:センドリアン・バーハッド)の雇用パス(EP:エンプロイメント・パス)は、内務省入国管理局の外国雇用管理システム(ESD:エックスパッツ・サービス・ディビジョン)などで審査されます。一方でラブアン法人(Labuan IBC:ラブアン・アイビーシー)の就労許可(Labuan Work Permit:ラブアン・ワーク・パーミット)は、ラブアン金融サービス庁(Labuan FSA:ラブアン・エフエスエー)が管轄しています。
審査を行う行政機関が異なるため、本土法人で求められるRM500,000(約1,950万円)以上(外資100%企業の場合)といった最低資本金要件(さいていしほんきんようけん)の制限を受けずに就労許可を申請できます。
| 比較項目 | マレーシア本土法人(Sdn Bhd) | ラブアン法人(Labuan IBC) |
|---|---|---|
| 管轄機関 | 内務省入国管理局(ESD / MIDA) | ラブアン金融サービス庁(Labuan FSA) |
| 最低資本金要件(外資100%) | RM500,000(約1,950万円)以上 | 規定なし(事業内容による) |
| 申請ビザの名称 | 雇用パス(EP) | ラブアン就労許可(Work Permit) |
実体要件(Substance要件)の維持と法人税率3%の適用条件
ラブアン法人でビザを取得し、優遇税率(ゆうぐうぜいりつ)を受けるには実体要件(Substance要件:サブスタンスようけん)の維持が不可欠です。かつて存在した年間RM20,000(約78万円)の定額課税制度(ていがくかぜいせいど)は廃止されており、現在は実体要件を満たすことが必須条件となっています。
具体的には、業種ごとに指定された「現地雇用の人数」と「マレーシア国内での年間運営経費(ねんかんうんえいけいひ)」の要件をクリアする必要があります。これらを達成することで事業所得に対する法人税率3%が適用されます。現地での税務や優遇条件の注意点はマレーシア法人税で節税する方法は?軽減税率とラブアンの注意点で詳しく解説しています。
実体要件を満たせない場合、優遇税率3%は適用されず、本土法人と同じ24%の標準税率が課されるリスクがあります。ビザ維持コストだけでなく、実体維持にかかる年間の運用費用を計算しておく必要があります。
本土ビジネスへの制約とラブアン法人が適している業種
ラブアン法人は資本金要件の柔軟性や税制面で利点があるものの、マレーシア国内におけるB2C(対個人)ビジネスには制約が存在します。現地で店舗を構える飲食業や小売業、一般的な生活関連サービスを営む場合、ラブアン法人でのビザ取得は適していません。
自社のビジネスモデルや顧客の所在地に合わせて法人形態を選ぶ必要があります。
- ✓ ラブアン法人が適している事業:IT関連サービス、国際コンサルティング、持株会社(ホールディングス)、国外取引中心の貿易業
- ✕ 本土法人(Sdn Bhd)を選ぶべき事業:飲食店、生活関連サービス、マレーシア国内の一般消費者を対象とする小売業
事業の対象が「マレーシア国外の取引先」か「マレーシア国内の消費者」かによって、選択すべき法人形態と経営ビザの申請手順が決定します。実務上の制約を見極めたうえで申請を進めましょう。
| 項目 | 本土法人(Sdn Bhd) | ラブアン法人(Labuan) |
|---|---|---|
| 主要管轄機関 | 内務省・ESD | Labuan FSA |
| 資本金要件 | RM25万(約975万円)〜100万 | 規定なし(実務上の要件あり) |
| 適用される税率 | 法人税 17%〜24% | 法人税 3%(実体要件あり) |
| 適した事業領域 | マレーシア国内取引・店舗 | 国際取引・オフショア事業 |
飲食・小売・貿易業におけるWRTライセンスと外資規制の注意点
マレーシアで飲食店やショップ、貿易業などを外資過半数の資本で始めるため、経営ビザ(雇用パス)の申請が必要になります。その申請前にWRTライセンス(卸売・小売り・生活関連サービスライセンス)の取得が必須です。
このライセンスを取得していないと、会社を設立して資本金を送金していても、雇用パス(EP)の審査で確実に申請が却下されます。
WRT(卸売・小売り・生活関連サービス)ライセンスの概要
WRTライセンスとは、外国資本が50%を超える企業がマレーシア国内で消費者向けの事業を行う際に必要な営業許可です。一般消費者に直接商品を売るビジネスや、国内の流合作業に関わる業種が対象になります。
| 対象となる主な業種 | 主な条件・注意点 |
|---|---|
| 飲食店・カフェ・レストラン | 店舗の規模やコンセプト、現地雇用の計画が審査されます。 |
| アパレル・雑貨・販売ショップ | 実店舗の契約や内装の準備状況が確認されます。 |
| 輸入卸売・貿易・物流業 | マレーシア国内での流通ルートや倉庫の確保が必要です。 |
ITシステム開発や純粋なB2Bコンサルティング業ではWRTライセンスは不要です。しかし、商品が最終消費者や現地小売店に渡る事業では、許可なくビザ手続に進むことはできません。
最低払込資本金RM1,000,000(約3,900万円)のハードルと事前審査のポイント
外国資本が過半数を占める企業がWRTライセンスを取得するには、最低払込資本金がRM1,000,000(100万マレーシア・リンギット(約3,900万円))必要です。
通常の外国資本100%企業の最低払込資本金はRM500,000(約1,950万円)ですが、WRT対象業種では2倍の資金準備が求められます。資金準備だけでなく、明確な事業計画書や店舗賃貸契約書の提示も要件となります。
自社の事業形態がWRTライセンスの対象になるか判断に迷う場合は、早い段階で実績のある現地の専門家へ相談してください。適切な手続きを進めるためにも、事前準備の段階でマレーシア進出パートナーの失敗しない選び方を確認し、頼れるアライアンス先を確保しておくと安心です。
ライセンス未取得によるビザ申請却下のリスク
ビザ申請でよくある失敗が、WRTライセンスの取得完了前に内務省入国管理局(ESDポータル)へ雇用パス(EP)を申請してしまうケースです。
WRTライセンスが必要な業種であるにもかかわらず未取得のままビザ申請を行うと、システム上または審査段階で即座に却下されます。一度不許可になると、再申請時の審査基準が厳しくなる恐れがあります。
安全に経営ビザを取得するためには、正しい手順を守ることが欠かせません。まず現地法人(Sdn Bhd)を設立し、RM1,000,000(約3,900万円)の資本金を送金します。その上でWRTライセンスの承認を受け、最後にESDポータルで雇用パス(EP)を申請する順番を必ず守ってください。
会社設立から経営ビザ取得までの標準手順・申請期間・必要費用
マレーシアで事業を立ち上げて経営ビザを取得するまでの標準的な期間は準備開始から実際に現地で就労できるまで約3〜6ヶ月です。費用は経営者ビザ(雇用パス)の政府申請手数料が1件あたり2,000リンギット(RM2,000(約7.8万円))です。これに加えて現地法人設立費用やコンサルティング報酬、規定の払込資本金が別途必要になります。
現地法人(Sdn Bhd/センドリアン・バーハッド)を登記します。そのうえで、ビザ申請の前提となる資本金を口座へ着金させる流れです。
外国人雇用システムへ会社アカウントを登録します。その後、政府ポータルから経営者の雇用パスを申請する手順です。
審査通過後に規定の政府手数料を支払い、電子就労許可証(ePASS)をオンラインでダウンロードします。
ステップ1:現地法人設立と法人銀行口座の開設
最初にマレーシア現地法人(Sdn Bhd)を企業委員会に登記することから進めていきます。会社登記自体は数週間で完了しますが、ビザ申請には規定を満たす資本金の払い込みが必要です。
経営ビザ(雇用パス)を申請する場合、100%外国資本の企業なら最低RM500,000(約1,950万円)の払込資本金が求められます。飲食業や小売業、卸売業・貿易業を行う場合は、WRTライセンス(卸売・小売り・貿易ライセンス)の要件によりRM1,000,000(約3,900万円)以上の資本金が必要です。
登記後に現地で法人銀行口座を開設し、日本から資本金を送金して着金証明を取得するまでが最初の段階となります。
ステップ2:ESDポータル企業登録とXPats Gateway申請
法人の準備が整ったら、内務省入国管理局のESD(Expatriate Services Division/エックスパトリエイト・サービス・ディビジョン)ポータルを開きます。そこで企業登録を行っていきます。会社の登記書類や事務所の賃貸契約書、事業計画を提出してアカウントの承認を受ける流れとなります。
企業のESD登録が完了したら次の段階です。外国人雇用申請システム「XPats Gateway(エックスパッツ・ゲートウェイ)」を通じて役員の雇用パス(Employment Pass/エンプロイメント・パス)を申請します。
なお、製造業やMIDA(マレーシア工業開発庁)の管轄企業は「MIDA Expatriate System」を使用する仕組みです。その他の一般事業会社は「ESDポータル」を使用する形へシステムが完全分離されています。自社の業種に応じた正しい申請ルートを選んで手続きを進める必要があります。
ステップ3:ビザ審査承認とePASSの発行手続き
申請が承認されると、政府から承認通知(Approval Letter)が発行される形となります。通知を受け取ったら、1件あたりRM2,000(約7.8万円)の就労ビザ申請手数料をオンラインで決済します。
現在の手続きでは、パスポートへ物理的なビザステッカーを貼る作業は行われません。システム上で電子就労許可証であるePASS(イーパス)が直接発行されます。
承認後にePASSをオンラインでダウンロードして印刷すれば、現地での合法的な経営活動と滞在が可能になります。
全体にかかる標準期間(約3〜6ヶ月)と行政手数料・専門家費用
手続き全体のスケジュールと発生する主要な費用を一覧にまとめました。資金と時間の計画を立てる際の参考にしてください。
| 工程・項目 | 必要期間の目安 | 費用・条件の目安 |
|---|---|---|
| 現地法人(Sdn Bhd)設立・口座開設 | 約1ヶ月〜2ヶ月 | 最低払込資本金(RM500,000(約1,950万円)〜)+設立代行報酬 |
| ESDポータル企業登録 | 約2週間〜1ヶ月 | システム登録審査(提出書類の審査) |
| 雇用パス(EP)申請〜承認 | 約1ヶ月〜2ヶ月 | ビザ申請手数料(1件あたりRM2,000(約7.8万円)) |
| 全体の合計(標準) | 約3ヶ月〜6ヶ月 | 資本金+行政手数料(RM2,000(約7.8万円)〜)+専門家報酬 |
経営ビザの取得にあたっては、経営者自身の役員報酬(基本給)の設定にも注意が必要です。最も一般的な「Category I(カテゴリー1)」で申請する場合、月額RM20,000(約78万円)以上の基本給を設定する必要があります。
現地での設立費用や人件費などの初期コストをおさえて円滑に事業を軌道に乗せましょう。あわせてマレーシア進出で活用できる補助金5選と優遇制度を確認し、利用できる支援制度を事前に網羅しておくことをおすすめします。
雇用パスの給与要件を満たしているかの判断は「基本給(Basic Salary)」のみで判定されます。住宅手当や役職手当を含めた合算金額では審査に通りません。雇用契約書を作成する際は、各種手当を除いた純粋な基本給の金額が規定ラインを超えているか必ず確認してください。

経営ビザ申請でよくある失敗・不許可原因と居住者取締役の確保
マレーシアで会社を設立しても、経営者向けのビザが自動的に発給されることはありません。外国人雇用申請システム(XPats Gateway=エックスパッツ・ゲートウェイ)などを通じてビザの審査が行われます。事業の実態や基本給の条件を満たしていない場合、申請は拒否されるでしょう。
「会社設立=ビザ発給」という誤解と事業実態(オフィス・現地雇用)不足
現地法人(Sdn. Bhd.=センドリアン・バーハッド)の登記完了と、経営者が取得する雇用パス(EP=エンプロイメント・パス)の手続きは別々に行われます。両者は完全に独立した別個の審査です。会社を作っただけでは、現地に長期滞在して経営を行う資格は得られません。
ビザ審査を行う内務省入国管理局(Immigration Department=いみんきょく)は、ペーパーカンパニーを使った不正取得を厳格に取り締まっています。バーチャルオフィスではなく実体のあるオフィス物件の賃貸契約書や、事業活動を示す売上実績・事業計画書が提出できなければ不許可となります。
あわせて、現地人材の雇用意欲も審査でチェックされるでしょう。あらかじめマレーシア進出の採用と人件費はいくら?2026年最新給与相場を確認し、現地人を採用する具体的な資金計画を示せるかが審査通過の分かれ目となります。
手当を除外した「基本給(Basic Salary)」基準の判定ミス
経営ビザ申請で最も落とし穴になりやすいのが、経営者に支払う役員報酬(やくいんほうしゅう)の金額設定です。審査で確認される金額は、各種手当を除いた「基本給(Basic Salary)」のみに限られます。
2026年6月施行の新基準により、雇用パスCategory I(カテゴリー1)は月額RM20,000(約78万円)以上の基本給が必要です。Category II(カテゴリー2)では月額RM10,000(約39万円)以上が求められます。住宅手当や役職手当を含めて条件額を超えていても、基本給単体で届いていなければ即座に却下されます。
不許可になった場合のオンライン異議申立(Appeal=アピール)期限は、通知受領から14日以内と短く設定されています。申請前の段階で基本給の額面を正しく設計しておく必要があります。
現地居住者取締役(Nominee Director)の選任と信頼できるアライアンス先の見極め
マレーシア会社法に基づき、現地法人を設立する際には規定があります。マレーシア国内に居住する1名以上の「居住者取締役(きょじゅうしゃとりしまりやく/Nominee Director=ノミニー・ディレクター)」を設置しなければなりません。自身が経営ビザを取得して現地に移住するまでの間、この居住者取締役の確保が必須となります。
居住者取締役を探す手段として、格安の名義貸し業者や素性の分からない現地個人に頼るのは危険です。設立後に連絡が途絶えたり、口座開設の協力拒否や法外な報酬を請求されたりして、事業が中断する事例が後を絶ちません。
トラブルを避け安全に登記を進めるには、現地の事情に詳しい提携企業や信頼できる専門家マッチングメディアを活用しましょう。身元と実績が保証されたアライアンス先から選任するのが確実な方法です。
| よくある不許可・トラブル原因 | 発生するリスク | 回避するための具体的な対策 |
|---|---|---|
| 実体オフィスの不在 | ペーパーカンパニーとみなされEP即時却下 | 契約書や写真で実在する商業オフィスを証明する |
| 手当込みでの給与算定 | 基本給(Basic Salary)不足で審査落ち | 手当を除いた額面のみでRM10,000(約39万円)またはRM20,000(約78万円)以上に設定 |
| 不透明な名義取締役の利用 | 銀行口座の凍結やビザ更新手続きのストップ | 実績あるアライアンス先を経由して居住者取締役を確保する |
失敗の原因となるポイントを事前に把握し、実態のある事業体制と正確な給与設計を整えて申請に進みましょう。
経営者の家族帯同(Dependent Pass)の申請条件と手続き
経営ビザ(雇用パス)を取得すれば、配偶者や18歳未満の子ども、さらに実両親や義理の両親もマレーシアへ一緒に連れていくことができます。配偶者と子どもは扶養家族パス(Dependent Pass=ディペンデント・パス)を申請します。一方、両親は長期滞在パス(Long-Term Social Visit Pass=ロング・ターム・ソーシャル・ビジット・パス)を申請する形になります。
ビザの枠組みを正しく把握しておけば、会社設立後の家族移住をスムーズに進められるでしょう。対象家族ごとの申請条件や手続きのポイントを詳しく確認していきましょう。
配偶者・18歳未満の子ども向け帯同パス(Dependent Pass)の申請条件
経営ビザである雇用パス(EP=エンプロイメント・パス)の本人が主申請者となり、配偶者と18歳未満の実子・養子に対して扶養家族パスを申請します。審査は外国人雇用申請システム(ESDポータル)を通じて行われます。
主な必要書類は、駐日マレーシア大使館等で認証を受けた婚姻証明書や戸籍謄本(英訳・公証付き)です。マレーシア起業の完全ガイド|会社設立と就労ビザの失敗しない手順でもお伝えしています。法人の設立登記とあわせて書類準備を進めておくと、滞在許可の発行までが円滑になります。
扶養家族パス(Dependent Pass)の有効期限は、経営者本人の雇用パスの有効期限と原則同じになります。本人のビザ更新に合わせて家族分も更新手続きを行います。
2026年6月改定:EP Category III保有者への家族帯同許可拡大
2026年6月1日に施行された制度改定により、雇用パスの家族帯同条件が大きく見直されました。従来は上位カテゴリーに限られていた家族帯同が、EP Category III(カテゴリー3)の保持者にも全面解禁されています。
この改定により、基本月額給与がRM5,000(約19.5万円)以上RM9,999(約39万円)以下のCategory IIIであっても、配偶者および18歳未満の子どもの帯同ビザ申請が可能です。経営者としてどのカテゴリーで雇用パスを取得した場合でも、家族と一緒にマレーシアへ移住できる環境が整いました。
| 雇用パスの区分 | 月額基本給与条件 | 配偶者・子どもの帯同 |
|---|---|---|
| Category I | RM20,000(約78万円)以上 | 可能 |
| Category II | RM10,000(約39万円)〜RM19,999(約78万円) | 可能 |
| Category III | RM5,000(約19.5万円)〜RM9,999(約39万円) | 可能(2026年6月より拡大) |
両親・義両親向け長期滞在パス(Long-Term Social Visit Pass)の活用
経営者本人の実両親や義理の両親を呼び寄せる場合も同様です。扶養家族パスではなく長期滞在パス(Long-Term Social Visit Pass)を申請します。このパスを取得することで、両親も現地で長期間一緒に生活できます。
申請時には、経営者本人との親子関係を証明する戸籍謄本や、現地での生活を支えるための誓約書・収入証明などを提出します。有効期限は最長1年となるケースが多く、毎年更新の手続きを行う運用が一般的です。
両親向けの長期滞在パスは、入国管理局(Immigration Department=いみんきょく)による審査基準が個別に判断されます。発行を保証するものではないため、渡航スケジュールにはゆとりを持って準備しましょう。
まとめ:自社に最適な経営ビザを選び現地パートナーと事業を成功させよう
マレーシアで事業経営を行うには、自社の資金力や業種に合わせた正しいビザの選定と、各種要件のクリアが不可欠です。単に会社を設立するだけではビザは発給されないため、初期の計画段階から法的基準を見極める必要があります。
- 現地法人(Sdn Bhd=センドリアン・バーハッド)で雇用パスを取得するには要件があります。出資比率に応じた最低払込資本金(さいていしほんきん)や役員報酬基準を満たさなければなりません。
- 事業形態や目的に応じて、ラブアン法人の就労許可やプレミアム・ビザ・プログラム(PVIP=ピーブイアイピー)などの選択肢を比較検討する必要があります。
- 飲食業や小売業・貿易業では卸売・小売り・貿易ライセンス(WRT承認=ダブリューアールティーしょうにん)など業種別の外資規制対策が求められます。
- 最新の制度改定や審査基準に留意し、不許可リスクを避ける申請計画を立てることが事業成功の鍵です。
ビザ選定の誤りによる不許可や事業の遅延を防ぐために、まず自社の事業規模に適合するビザ要件を整理し、信頼できる現地パートナーへの相談から始めてみてください。
よくある質問
- Q.マレーシアで外国人個人が個人事業主として起業しビザを取ることはできますか?
- A.不可能です。マレーシアでは外国人の個人事業主登録(Sole Proprietorship)が認められておらず、必ず現地法人(Sdn Bhd等)を設立して法人からビザを申請する必要があります。
- Q.役員報酬の最低条件(月額RM20,000(約78万円)等)は住宅手当なども含めて計算できますか?
- A.含まれません。EPの給与要件は「基本給(Basic Salary)」のみで判定され、住宅手当や各種インセンティブは算入対象外となるため注意が必要です。
- Q.ビザ申請が一度不許可(Rejected)になった場合、どうすればいいですか?
- A.不許可通知の受領から14日以内に、ESDオンラインポータル上で不服申立(Appeal)を行う必要があります。理由を分析し、追加書類を提出する対応が求められます。






