マレーシアのアンワル首相兼財務相は10月9日、2027年予算案を議会に提出した。政府系機関などの投資を含む総額はRM5,100億(約19.89兆円)で、連邦政府予算はRM4,598億(約17.93兆円)となる。支出を拡大する一方、財政赤字は国内総生産(GDP)比3.3%へ縮小する方針だ。(ベルナマ通信)
家計支援や開発投資を続けながら、財政の健全化を進める内容となっている。予算に示された数値は、今後の支出計画や歳入見通しであり、実績ではない。

総額RM5,100億(約19.89兆円)には政府系機関の投資も含む
財務省の予算演説によると、連邦政府予算の内訳は、行政サービスなどを支える経常支出がRM3,768億(約14.7兆円)、インフラ整備などの開発支出がRM830億(約3.24兆円)となる。
総額RM5,100億(約19.89兆円)には、このほか政府系投資会社によるRM250億(約9,750億円)、官民によるRM110億(約4,290億円)、連邦法定機関や財務相傘下企業によるRM142億(約5,538億円)の投資が含まれる。総額のすべてを連邦政府が直接支出するわけではない。(財務省・予算演説)
赤字縮小を目指す一方、燃料補助金が負担に
政府は2027年の歳入をRM3,808億(約14.85兆円)と見込む。財政赤字のGDP比は、2026年見通しの3.6%から2027年に3.3%へ引き下げ、2028年には3%とする目標を掲げた。
ただし、2026年の赤字見通しは当初目標の3.5%から悪化している。予算演説では、中東情勢の影響で燃料補助金がRM400億(約1.56兆円)に増加したことを説明しており、エネルギー価格が財政運営を左右する要因となっている。(財務省・予算演説)
生活支援をRM160億(約6,240億円)に拡大
家計向けでは、生活支援制度「STR」と「SARA」の予算を、従来のRM150億(約5,850億円)からRM160億(約6,240億円)へ増額する方針を示した。SARAは生活必需品などの購入を支える制度で、STR受給者への支援は年間最大RM1,800(約7.02万円)となる。
最低賃金についても、2027年6月から月額RM1,700(約6.63万円)をRM2,000(約7.8万円)に引き上げると発表した。ただし、年間売上高RM5,000万(約19.5億円)未満の零細・中小企業は適用除外とされており、すべての雇用主が一律に対象となるわけではない。(財務省・予算演説)
支援拡大と企業のコスト増が併存
Moomoo News MYは今回の予算について、家計支援や住宅関連施策が消費・融資需要を支える一方、賃金引き上げが対象企業の人件費を押し上げる可能性を指摘している。
建設分野についても、予算配分が直ちに企業利益へ結びつくとは限らず、事業の執行速度や工事の進捗が影響するとの見方を示した。これらは同媒体による分析であり、政府が企業業績への効果を保証したものではない。
支出拡大の効果を見極めるうえでは、予算規模だけでなく、支援の対象範囲や実施時期、企業が負担するコストの変化も注目点となる。
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グラフの出典・集計条件
支出は経常支出・総開発支出・該当年のCOVID-19基金の合計。出典:マレーシア政府「Annual Federal Government Finance」。円は1RM=39円の参考換算(2026年11月3日の参考レートを丸めて使用)。各年当時の円換算額ではない。
注:支出は経常支出、開発支出、該当年のCOVID-19基金の合計。2025年までの年次データ。出典:マレーシア政府「Annual Federal Government Finance」、マレーシア財務省「Budget 2027」予算演説。
比較用の参考値:2000年 約RM845億(約3.3兆円)、2025年 約RM4,127億(約16.1兆円)、2027年予算案 RM4,598億(約17.93兆円)。2027年の総額RM5,100億(約19.89兆円)は連邦政府予算に政府系投資会社・官民・法定機関などの投資を加えた数値のため、同じ系列には含めていません。


今回の予算案で私が注目しているのは、支援の規模よりも「誰が対象となり、いつ実施されるか」です。予算総額が増えても、それが自社の売上増や負担軽減に直結するとは限りません。
例えば、最低賃金の引き上げは家計の購買力を支える一方、対象となる企業には人件費の増加につながります。マレーシアで事業を計画するなら、消費拡大への期待だけでなく、自社が適用対象になるか、採用人数や価格設定にどの程度影響するかまで確認したいところです。
インフラ関連も、予算が付いた段階と、発注が始まって取引機会が生まれる段階では、取るべき行動が異なります。私なら、予算案は市場の方向性を把握する材料とし、具体的な投資や発注は、制度の詳細と案件の進捗を確認して判断します。